ゲムマ2023秋出展要項トラブルについて、どうしてこうなった→まとめてみました

書き始めてみたら、すごく筆が進む進む。いっぱい書いてしまいましたわ。

今回一波乱あった、ゲムマの新しい出展要項。公開から3日でいくつか修正が入るなど、なかなか熱くてアクティブな事態になりました。

今回の記事は、それを私の目線でまとめたものです。


今回の問題の前提

既に出展申込ページが更新されてしまって、元の記載を見ることはできなくなってしまいました。ので、ここは私の記憶です。


ゲームマーケット2023秋の出展要項(以下、「本要項」と書くことがあります)が6/16に公開され、出展申込が開始されました。https://gamemarket.jp/entry

(この記事から半年後以降に見ると、↑のページの内容は書き変わっていると思いますが、仕様です)


公開された当日から、本要項を読んだ人たちから、いろんな意見が飛び出してきました。

R18ゾーンのこととか、チャック袋横丁とか、エリア出展の一部廃止とか、新しく色々なことが書かれていましたが、特に問題視されていたのが、以下。


出展する権利の「また貸し」とか「売買」とかを禁止する、という項目です。

※現在も見出し部分が『ブース内出展(また貸し)』と書いてあって、でも本文を見ると合同出展のことしか書いてないあたりに、名残は残っています(笑

規制せざるを得ない理由を、公式は「1ブースに大量のサークルが入ると、アダルティなゾーンを作る関係で、基準に合致する・しないゲームを把握するのが難しくなる」とか書いてありました。


なお、最終的には現在の「4サークル以上の合同出展は事前に相談の上、場合によっては禁止」に落ち着きました。(6/19に更新)


問題点の洗い出しから

私は、新しい基準作りに反対するものではなく、むしろ挑戦している公式の姿勢に賛同します。この立場に立った上で、今回何が足りなかったのか考察。

まずは、何が問題となったのか、洗い出してみましょう。


ゲムマに出展する権利とは、何なのか

まず最初にこれ。定義がない。民法上の債権であることは違いないですが、これは一体何?

いつ、誰に、どんな内容の権利が、発生するのか、書かれていない。

申込方法や出展方法、当日までに配られるものなどは細かく書かれていますが、そもそもどんな権利なのか、誰も気にしていなかったせいか、どこにも書かれていないんですね。

これが、以下の問題を引き起こす下地になります。


また貸しとは?

本来の字義に従えば、「他人から借りたものを、別の第三者に貸すこと」です。

これが成り立つためには、ゲムマ公式から与えられた「ゲムマに出展する権利」の中身は、「ブース(スペース)を借りている」のだ、という前提が必要になります。

・・・ん?我々は、スペースを借りてるのか?出展する権利とは、賃借権だったのか?


で、「出展する権利の売買」とは?

(現在の修正後要項では、売買に関する記載は消えました)

今度は、権利の「売却」ができる、ともある。

まぁ債権だし、売却は確かにできるだろうが、ここでおかしいと思ったのは、ブース内出展、また貸し、出展する権利の売買が、全部同列に扱われていることです。

加えて、委託販売で手数料を取ることも、権利の一部売買と同種の行為なので、という記載までありましたね。・・・何を言っているんだこれは?


また貸し(転貸)は物の貸し借りの話であり、売買は所有権の話である。本来同列になる筋合いのものではないです。この辺りが理由で、話が一気に複雑になってしまい、たいそうな混乱を招いたのであろう、と推測します。


ついでに、売却と合同出展は、何が違うのか

主にTwitterで見ましたが、合同出展を禁止する、とは書かれていないのである。

だがしかし、合同出展にも色々なパターンがあります。


申し込み段階から合同だと決めていたパターン、落選が発表されてから救済策として他サークルに混ざるパターン、ゲムマ出展間際まで相手を募るパターンと、色々である。

特に、この例の最後のケースだと、

  1. 先に出展する権利をゲムマ公式から受け取る
  2. その後、権利者であるサークルが、権利の一部を(出展料の折半という名目であるが)金銭を受け取って譲渡する
ということがなされるわけで、この態様だと「売却だ!」と受け取られても仕方がないですわな。

最初のパターンでも、

  1. 出展料の折半名目で金銭が先に支払われる
  2. 権利が確定した段階で、その権利の一部を合同相手に譲る
という態様なわけで、先払いの売買と、何が違うっていうんでい?と聞かれたら、困ってしまいます。


しかし、その境界線はどこにあるのか?合同するか意思決定した時点がいつかで、合同出展か権利の売却なのか、決まるのか?無償だったらいいのか?それを、ゲムマ公式はどうやって確認するのか、いやできない、すなわち無視していいルールなのか?


権利の性質がもやもやした(本要項の前提となる部分が公式によって明示されていない)まま進んでいるので、みんな何もわからないのである。

いつ、何をしたら、誰に、どんな権利が発生するのか、はっきりしていないので、申込者(それが個人なのか、それともサークルという社団なのかも曖昧)が、何をしたらルールに抵触するのか、決まらないのである。
※出展規約をよく読むと、「出展者」は個人または法人とし、共同で出展する場合にその者が責務を負うものとする記載がありました。

もやもやするとは、つまりイライラするということでもある。


こういう時、何が起こるか、知ってる?

憲法上の表現の自由でよく話題になる「萎縮」である。すなわち、明文上、合同出展は禁止されてないが、真面目な人たちが「ルール違反はしたくないので、合同出展はしない」と、まるで禁止されたかのように振る舞ってしまうのである。

合同出展を禁止していないから問題ない、なんてことはない。曖昧にしたことが問題なのである。全く無関係で無責任な第三者に「それ権利の売却だろ?」と指摘されて燃えようものなら、たまったもんじゃないですわ。

近頃、◯◯警察なんてものがよくいて、炎上させて回るなんて日常茶飯事な昨今、些細なトラブルも起こしたくないと思うのは、ごく普通なことだもんな。


これは、誰も利益が得られない、悲しい世界。


どうすれば問題にならなかったのだろう?

以下、氷鏡さんが思う、問題回避策です。ありきたりですが。


・また貸しや権利の売買などを、文章で定義しておくべきだった

身近にある単語だから、おそらく油断したのだろう、というのが氷鏡さんの推測。

ルールの策定にあっては、身近な単語でも、きちんと定義してから使わないといけない。定義しなかった単語は、読んだ側の各位で勝手に解釈されて、一意に定まりません。

それが本筋とは関係ない部分で起こったなら、トラブルにはならない。けど、今回は一番肝になるところでそれが起こってしまったので、大事故である。

これ、ボドゲのルールも同じですよ。


それに、定義しようと文章化する過程で、自然と「ん?なんか想定が足りないのでは?」と思い至ることもしばしば。なので、最終的に定義を公開しなくても、定義のための文章化を試みること自体に、意味があるのです。

これ、ボドゲのルールも同じですよ。


・公開する前に、社外の人間によるダブルチェックを入れるべきだった

社内では相当チェックされたと思いますが、問題の前提をよく理解している社内の関係者では、いろんな前提を脳内で勝手に補足してしまいがち。ここは、全く無関係な第三者にも読んでもらうべきだった。

これ、ボドゲのルールも同じですよ。


といったところで、今回のまとめ終了。ゲムマ秋、無事に開催されることを祈ります。申込しよーっと。