論考:同人ゲーム製作におけるフォアシュピアクションやゲムマの試遊等での最善の方法について
テストプレイ会を長く継続している天岩庵の店主として、ボドゲクリエイターの皆さんを観察していて思ったことを少々。
というかこの前フォアシュピ参加レポを書きながら、レポの中身に入れるもんじゃないよなーと思ってメモっておいた部分。を寝かせて膨らませたもの。
サークルのみなさん、フォアシュピアクションで高順位取りたい!って思いませんでした??
フォアシュピアクションとは?
2024年春のフォアシュピールから(試験的に)始まったもので、元ネタはドイツ・エッセンのエッセンシュピールでやってるやつ。
イベント参加者が、会場で遊んだゲームに対し投票し、平均点とかを計算し定時に貼り出す、というもの。
これを大試遊会であるフォアシュピールで真似てやってみた、というもの。主催側の想いは「展示ゲームが多すぎるが故に、遊べなかったものの中に面白いものがあったかもしれない。当日遊べなかったけど周りが面白いって言ってたゲームを知るきっかけになればいいな。」です!
ここで投票を多く高く集めることができたら、本番(ゲムマ)でも注目&購入間違いなし!それに、単純に「面白い!」ってみんなに言ってもらえるのはうれしいよね!!
実際、今回のフォアシュピアクションで1位になったゲームは、私の観測範囲においては意外なものだったようですし、なかなか効果はあったのではないかと。
そこで、今日は「フォアシュピアクションで高順位に入るためにはどうしたらいいか?」について論考してみようと思います(唐突
なぜそんなことを?
デザイナーでもない氷鏡が論考するのかって?無駄では?違うんです。
これから書くことは、お店でテスプ会を長らく続けていたり、ゲムマを歩いて回ってる中で、結構考えていたことではあるんです。脳内を文章化しておきたいと思ったんです。
今回、それはフォアシュピアクションでも同じことだなって感じまして。まぁ前置きはここまで。論考開始。
まずは、仕組みを理解しよう
フォアシュピアクションそのものを観察してみましょう。スタッフ参加はしましたけど、この辺りにはノータッチですので、以下は事実に基づかない推測です。他の投票システムならこうしている、というものを列挙しただけです。
おさらいするまでも無いぜ!という方はどうぞ読み飛ばしてください。
実際に遊んだ人が投票する
これはルール。これは必定。これを反故にされるとそもそも成立しない。不正投票だー!
高得点の投票を得る
これも必定。低い得点をいくら受けてもランキングは上がらない。面白い!と思ってもらわないといけない。
投票数には一定の足切りラインがある
得点の高い低いとは別に、1つのゲームに一定票以上集まらないとランキングに載らない、というのはある。無いと困る。
たった1票が5点満点で1位!というのはランキングの意味がないですし。まずは数が命。
投票は、会場の外で行われる
エッセンとフォアシュピではここが最大の差異かもしれない。遊んでいるその日は、別のゲームを遊ぶのに忙しいわけで。
投票は数時間後落ち着いてから、あるいは翌日、翌々日になされることもある。
こんな感じで、高順位になるためのコツを考えてみましょう。
コツ1:打席に立つ回数を上げる
まずは、試遊する回数を増やしましょう。その点で1回10分のゲームは考える必要がないポイントですね。
しかし、1回1時間以上なゲームだと、回数を上げる方法を用意しないといけない。
(エッセンで高得点を獲得する重量級ゲームは、おそらく試遊卓を増やして対応しているのだと思っています)
どうしましょう?方法はいくつかありますが、やってはいけないことならあります。
ダメ:フルゲームをプレイさせる
最初から最後まで全部プレイさせてるのって、過剰だと思います。そもそも「試遊」だっていうのに。
極端な例を挙げるなら、TGSにクリアまで60時間かかるRPGを何も加工せずに展示する、みたいな感じです。
イベントが6時間で、1回1時間、4名が限界だと、MAX24人にしか遊んでもらえません。目の前には試遊候補者が300人400人いるというのに。
コツ2:一番楽しいとこの「直前で」終わる
次に得点=質。これはどっちかというと人間の特性って感じですが、「ヒトがゲームを一番面白いと感じるのはいつか」を考えてみましょう。
私が思うに、
- 面白さの頂点ではなく、頂点が見えた時
- 初めてが、一番
です。
面白さの頂点ではなく、頂点が見えた時
ちょっと長くなりますが、ゲームのルールを聞いている時点が一番面白い、というケース、ありませんか?ルールは面白いのに実際遊んだら面白くなかった、という体験の場合、なぜ面白い「と感じた」のか。それは面白さの頂点が見えたから。期待がもたらす効果です。
人間、わりと予測した・できたものに興奮を感じるところがあります。予測だけで面白くなっちゃって、その後実際に面白さを感じた瞬間はそれの「確認作業」「証明」でしかない、という。
加えて、「えんもたけなわ」という言葉もあるように、「盛り上がりが最高潮になったらあとは下がるだけ」です。なので、ゲームの最高潮まで体験させたら、必然的にそのあとの盛り下がる部分も体験させてしまうことになります。めんどくさい得点計算とか片付けとか。
なので、「最高潮のポイント」まで到達する手前で、試遊を終えるのがベスト。そしたら、プレイヤーの期待が高得点につながるでしょう。記憶にも残りやすいので、後日振り返っても「あの試遊、もうちょっとやりたかったなぁ」ということで高得点の投票に。
そこを(期待した通りに)体験するためには、自分で遊ぶしかない、となれば購入待ったなし。
初めてが、一番
人間誰しも、未経験なものを初体験した時のことを一番記憶しているものです。
特に新作ボードゲームを買い漁ってる「ボードゲームを遊ぶ」層の皆様は、この「初回プレイの面白さ」を求めている節があります。
しかし、一番楽しいところを試遊で提供してしまうと、どうでしょう?2回目でも同じように楽しめるだろうか、否、もういいや、になる可能性が。
というか買ったあと遊んでも、試遊時のおもしろさを超えられないとしたら?
というわけで、
そういう恐れがあるので、試遊では「一番面白いところは体験させない、お預けにする」という心構えがちょうど良いと思うのです。
とはいえ例外は
あるものです。それは「2回目以降の方が面白いと期待できる」ゲーム。これならフルゲームやらせた方がいいケースも。ですが、氷鏡さん思うに、それはテラミスティカとかアグリコラとか、リプレイ性(=プレイ毎にランダムに構成要素が変更され、プレイ体験が変化する性質)が最高のゲームだけかと。
現状の国内同人ゲーム製作において、これを満たせているゲームはほんの一握りかと。
コツ3:多少の待ちが発生する状態を作る
いわゆる期待値コントロールと呼ぶべきものです。人間、行列に待つ間に期待値が上がるもの。行列の後、それに見事に応えると「すんなり達成した時よりも評価が上がる」という効果があります。それを利用しましょう。
1回が5分10分で短すぎる場合、逆にこれができない点はデメリット。
え?矛盾してない?
でもそれじゃあ、試遊回数がこなせないですよね。最初に「回数をこなせ!」って言ってたのと矛盾しませんか?
回数は確かに大事ですが、回数が最多だからってトップになるわけじゃない。最低限のラインを越えればいいのであって、同時に点数も大事です。満足度を高める努力をしないといけません。
試遊が毎回即刻終わってしまい、いつ行っても試遊卓が空いている状態って、側から見てるとどう思います?来た時には埋まっているけど、少し待ったらすぐ次が始まる、という状態がベストなのではないか?と。
逆に、1回5分だが何回も何回も遊びたくなるゲーム、というのは、試遊でも何回も遊ばせるべきだと思いませんか?何回遊んでも面白いんですから。
「これは何回目が一番面白いゲームなんだろうか?」と考えてみるのも、いい訓練になるかもしれません。それの1回前で試遊を止めるのです!
結論
最後に。人間の集中力が続く時間は、諸説ありますが、1回15〜20分と言われています。
なので、軽くても重くても、試遊は1回20分、というのが1つの理想なのでは、と結論します。重いゲームの方は20分で「最高潮の手前だけ」を体験できるように。軽いゲームの方は20分間楽しさを持続できる工夫を。
端的にまとめるなら「自分が作っているゲームが一番面白いのはどこなのかを正確に把握しろ」です。試遊のコツは、それの一歩手前で止める、一歩手前を短時間で体験できるように調整する、という点に尽きます。
言い方を変えて、自分がゲームを作ることで他者に向けて表現したいことの「核」はどこにあるのか、ということ。
ダメ:真に面白いゲームを作っている「だけ」
もはや耳にタコができてると思いますが、自分が本当に面白いゲームを作っているとしても、それを大勢の他人に知ってもらう努力ができないと、届きません。
多くは語るまい。
ダメ:本当に1時間かけないと面白さが伝わらないと思う
そういう方もいるかと思います。ですが、それってつまり、実プレイ時も1時間経たないと面白くならないってことになりませんか?
最初から最後まで楽しく遊びたい!が基本であるゲーマーの皆さんに満足してもらえるゲーム、という観点から見たとき、本当にそれでいいんでしょうか?せめて、最初の10分で面白そうだと予想&期待できるゲームを作ってもらえないでしょうか?
他にも遊びたいゲームはいっぱいあるし、タイパは大事です。
余談:これをテスプに応用
ここまではフォアシュピアクションを主眼に書いてきましたが、この方法論はテストプレイにも役に立ちます。テストプレイも、自分以外の他人に数多く遊んでもらってフィードバックをもらうことが重要ですので。
そして、ここが重要。軽いならともかく、重いゲームは毎回毎回1時間テストしていたのでは、時間切れで序盤しかテストできないとか、回数不足で調整が足りないとかってことになりかねません。つまりは「細切れにしてテストする」方法を考えておくと、これをクリアできるのです。
上記試遊で「ゲームの最高潮の手前を20分位で体験できる」切り出し方ができるということは、例えば「ゲーム中盤の盤面を設定して、この中盤は楽しいか」とか「終盤の盤面を設定して、フィニッシュだけテストする」とかできるわけです。
我ながら、デザイナーでもないのに偉そうなことを言ってるなー、と思ってはいます。ですが、試遊卓やテスプ会を横で見ていて、本当に毎回フルプレイする必要ある?と感じることはありまして。
今度こそ本当に結論
気がつけばだいぶ長くなりました。
イベントでの試遊にせよ、テストプレイにせよ、効率よく実施するために考えるべきポイントはおおよそ同じで、それをどう応用するかの問題だと思っております。
氷鏡さんはボドゲは作れないけど、ボドゲを作るみなさんを応援しております!